リウマチ診療情報
2014年12月7日に石川県地場産業振興センターにてリウマチ医療療養懇談会を開催させていただきました。
今年は開催時期が遅く、当日、風雪にて天候が非常に悪かったこともあり、御参加いただけたのは例年の半数程度でした。
2014年度のリウマチ医療におけるトピックスを、特に直前の11月に行われた米国リウマチ学会(ACR)の報告などを中心に、基礎から臨床までお話しさせていただきました。今回、米国リウマチ学会にて新しいRA治療指針の草稿版が発表されたこともあり、それを2013年に発表されたヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の治療指針、今年発表された日本リウマチ学会(JCR)の診療ガイドラインとの比較検討も行ってみました。
足元の悪い中、御参加いただけた皆様に深謝致します。
11月24日(日)にリウマチ医療懇談会を小松市民センターにて開催して盛況の内に終えることができました。
今回は、自分の講演と、リウマチ医療寸劇、患者さんの体験談の三部構成となりました。
講演は、基礎編と最新編に分けて行いました。基礎編では、リウマチの診断、治療目的、寛解の定義、活動性評価、治療方針について具体例を出しながら解説しました。治療方針はEULAR (欧州リウマチ学会)2013のレコメンデーションを日本向けにアレンジしたものを提示しました。国内外の主要な学会、特に直近のACR(米国リウマチ学会)2013や学術誌からの最新の知見も所々に入れましたが、時間の関係もあり、ゼルヤンツとそれ以降の新しいJak阻害剤に関する話題などを中心としました。なお、以上の内容ですが、今年の流行語を紹介しながら解説するという新しい試みにチャレンジしました。結果的に今年の流行語大賞の4つは全て網羅していました。滑ったところもあるでしょうが、結構笑いも取れていたと自負しています。
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笑いと言えば、久々の寸劇は、笑いとともにためにもなったでしょうか?体験発表では患者さんの生活の背景が聞けて感慨深いものがありました。
御参加いただいた皆お疲れ様でした、そして本当に有難うございました。
2013年11月23日(土)に都ホテルで行われたFIT-RA総会とその後のリウマチセミナーに参加しました。
FIT-RAには、関節リウマチの診療を行っている北陸三県の医療機関(現在金沢大学、富山大学を含む17医療機関)が参加し、生物学的製剤のデータベースを集約しています。
そのデータをもとに、FIT-RA所属の医師が、国内外の学会での報告や、学術誌への投稿を行っています。多数の高名な医師も出席され、今後の運営方針などについて議論されました。
セミナーでは、特別講演に西本憲弘先生をお招きして、「トシリズマブのPersonalized Medicine」の演題名にて御講演いただきました。西本先生と言えば、トシリズマブ(アクテムラ)の開発者として国内外で著名でおられます。堂々した佇まいで、開発時のエピソードから最近の話題まで淀みなく話され、リウマチ治療に対する情熱が感じられた講演でした。
IL-6やMMP-3の測定にて、アクテムラによる寛解やドラッグフリーの維持が予測できる点は、患者負担の面からも大変喜ばしいトピックでした。また、皮下注のアクテムラが国内承認されたばかりでもあり、点滴静注との違いについての質疑応答が興味深いものでした。
EULAR (欧州リウマチ学会)2013のレコメンデーションでは、生物学的製剤を単剤で使う場合はアクテムラを推奨していますが、免疫寛容にて抗体の出来にくい点滴静注の方がより望ましいようです。皮下注射の場合は、投与量が少なめとなる場合が多いこともあり、メトトレキサート(リウマトレックス)との併用がより望ましいようです。私も質疑応答、及びその後の懇親会にて、Jak阻害剤とIL-6との関係など色々と質問させていただき、大変勉強となりました。この場を借りて深謝致します。
11月9日(土)に開催され参加しました。
メインは、今話題のリウマチの新薬JaK阻害薬について、日本では第一人者である産業医科大の山岡邦宏先生の特別講演でした。基礎医学的な内容も含め、大変興味深く聞かせていただきました。日本でもすでに認可されたJaK阻害薬のトファシチニブ(ゼルヤンツ)は内服剤でありながら生物学的製剤に勝るとも劣らぬ効力を持つ一方、帯状疱疹等の感染症が多いとされています。
ゼルヤンツは、JaKを介してインターロイキン6のシグナル伝達を阻害する他、抗TNF剤のようにTNF-αを抑制したり、アバタセプト(オレンシア)のようにT細胞の活性化を抑制する効果など、現在の生物学的製剤を併せ持つような働きをするようです。
先日の米国リウマチ学会(ACR2013)では、ゼルヤンツで悪性腫瘍が有意に増加することはないとの報告がありましたが、少数とはいえ稀な腫瘍が起こった例もあり、投与前のスクリーニングをしっかり行い、慎重に経過をみることが望ましいようです。講演終了後も山岡先生には、いろいろと質問に丁寧に答えていただき、有意義な時間となり、深謝致します。
一般演題の部門では、私も「エタネルセプト(エンブレル)減量下にて長期寛解を維持している関節リウマチ(RA)症例の検討」とのタイトルで発表させていただきました。生物学的製剤を使用し、低疾患活動性もしくは寛解に至ることは多くなったものの、投薬をやめてしまうと1-2年後にはその多くでは再燃してしまうことがわかっています。一方、プリザーブ試験という有名な試験で、RAが低疾患活動性となった後にエンブレルを半量に減量した場合は、少なくとも1年はほぼその状態が維持できることがわかっています。今回の私の発表では、寛解後、さらにエンブレルの減量を重ね、5-6年間経過をみて、寛解(臨床的、画像的、機能的)を維持できている例の報告をさせていただきました。生物学的製剤の大きな問題は費用ですので、できるだけ少ない投薬量で寛解を維持できれば、大きな福音となるでしょう。ただし、減量途中で再燃される方も多いので、しっかりとした経過観察と評価が必要となります。多くの質問もいただき、御質問いただいた先生方、また御参加いただいた先生方やコメディカルの方々にも御礼申し上げます。
10月25日から30日にかけてサンディエゴで開催された米国(アメリカ)リウマチ学会に参加して参りました。台風の関係で最後まで予定通り行けるか微妙でしたが、幸いほぼスケジュール通りとなりました。サンディエゴは、基地の町としても有名で、ホテル近くの海岸には、空母ミッドウェイが軍事博物館として停泊しており賑わっていました。
今回は関節エコーやMRIなどの画像診断中心のワークショップを中心に参加しました。
関節リウマチに関しては、新薬に関する新たなデータの他、ユニークな報告も多く、この学会の内容は、11月24日のリウマチ療養懇談会にて報告させていただきますので、関心のある方は是非御参加ください。今回の学会報告だけではなく、基礎的なことや、この一年のニュースなど、専門用語をなるべく使わず、分かりやすく解説する予定です。寸劇や患者様の体験談などもあるようですので、楽しく、リラックスした雰囲気で行えたらと思っています。詳しくは、このページを御参照下さい。
日本線維筋痛症学会の第5回学術集会が、10月5日と6日に横浜市開港記念会館で開かれ、参加してきました。歴史のある建造物での学会というのも粋なものです。
1990年の米国リウマチ学会の診断基準から較べると、2010年の診断分類基準及び2011年の改訂基準では、患者さん自身の自己申告に依存する点が多く、リウマチ性疾患としてリウマチ科で診断治療して良いものか、日常診療では悩むことがあります。
米国精神医学会が今年新しく出したDSM-5という分類基準からすると、線維筋痛症のような病状は、Somatic symptom disorder (身体症状障害)という、これまでの身体表現性障害よりさらに広義な分類に入ってしまうようです。どの科が主として扱う疾患なのかさらに曖昧になりそうです。
関節リウマチにおける抗CCP抗体のように、診断や予後予測に多いに役立つ血清マーカーがあると助かります。線維筋痛症では、抗VGKC複合体抗体(抗電位依存性カリウムチャンネル複合体抗体)は一定陽性となるようですが、感受性、特異性とも、決め手としてはやや弱いようです。
診断においても、疾患の中核をなす群なのか派生する亜系の群なのかが明確に区別できないため、当然ながら治療体系もスッキリという訳には行きません。今も個々の医師が我流の治療を行う事が多いようです。線維筋痛症の薬物療法では高名な岡寛先生の講演を拝聴しました。先生が日常的に行っている治療チャートを提示され大変参考になりました。質疑応答では、疾患活動性や治療の有効性の判断の根拠、治療薬の増量や変更の判断のタイミング、有効であった場合の減量の判断などについて、私の方から質問させていただきました。
私もそうですが、昔からリウマチ性疾患に関わっている医師は、少なからず、今の線維筋痛症が置かれた状況は20年前位の関節リウマチの状況に似ていると感じているようです。
現在のリウマチ医療は診断、治療に格段の進歩を遂げ、パラダイムシフト(劇的変化)と言われる所以です。線維筋痛症にもこのような日が早く来て欲しいものです。
今月末に開催される米国リウマチ学会においても、米国精神医学会のDSM-5を受けて、また議論されることと思いますので、しっかりと聞いて来たいと思います。φ(..)メモメモ
8月9日に、東京ドームホテル札幌にて開催された第3回札幌リウマチケアミーティングにおいて、「クリニックにおける包括的リウマチケア」の演題名で特別講演を行わせていただきました。
当クリニックのリウマチ医療に関するシステム、特にリハビリスタッフの関わりを中心にして、地域への関わり方にも言及して、話させていただきました。悪天候にも関わらず、百数十名の方にお集まりいただき、質問やコメントも多くいただき感謝しております。座長を務めていただいたNTT東日本札幌病院院長の小池隆夫先生より「感銘を受けた」、北海道内科リウマチ科病院理事長の谷村一秀先生より「目から鱗」など思わぬ御評価もいただき恐縮致しました。講演後は御二人と札幌の郷土料理に舌鼓を打ちながら、しばしリウマチ談義を楽しみました。今一度、両先生、またこの講演会の準備に御尽力いただいた皆様に感謝申し上げます。
講演の要旨:
① ここ10年、生物学的製剤の導入など薬物療法の進歩により、RA治療は飛躍的に向上した。しかし完全な治癒への道のりはまだまだ遠い。RAの活動性は生活状況により大きく影響され、医師と看護師のみではなく、リハビリスタッフやMSWも含めた他職種の積極的介入により、チームプレイとしてRA患者さんのサポートを必要とする。
② 薬物療法の進歩により、RA患者さんの機能障害の程度は軽減し、社会生活の場は拡大したが、生活状況には多くの阻害要因が存在する。例えば、既に機能障害を負ったRA患者さんにとって使いづらい公共施設など、また早期に診断できても経済的問題にて薬物療法にアクセスできないことなども含まれる。RA患者さんのステージやクラスにかかわらず、その健康な社会生活の実現のため、地域社会へのアプローチも積極的に行うべきである。
当院でのシステムや具体的な対応例を挙げ、①、②に関して話させていただきました。ところで、この要旨は、我々石川勤医協リウマチグループが今回担当させていただく、第25回中部リウマチ学会のテーマ、~地域完結型医療を目指して~RA医療におけるユニバーサルデザインの創造~に直結するものです。その学会開催まであと2週間を切り、最後の調整に城北病院の村山医師を先頭に頑張っているところです。
欧州リウマチ学会(EULAR)が6/11-6/15にマドリッドで開催され参加してきました。
いろいろと新しい報告はありましたが、特に注目されたのは、レコメンデーション(治療に関する提言)が3年ぶりに改訂されたことで、ウィーン大学のスモーレン先生が発表。最終日のほぼ最後の発表にも関わらず、多くの人が集まっていました。まだ草稿の状態で、いくらか手直しされ後日、学会誌に掲載されることになるようです。
また6月30日に第15回石川リウマチ薬物治療研究会が開催され、長崎大学第一内科教授の川上先生に御講演いただきましたが、その中でも、新しいEULARのレコメンデーションにつき、詳しく述べられていました。日本を含め、世界中のリウマチ医の治療方針に大きな影響を与えるであろう、この変更の概要について、本日は御報告させていただきます。
まず、用語のことになりますが、リウマチの基本的治療薬であるDMARD(疾患修飾性抗リウマチ剤)を分類して新たに定義しています。
sDMARD(synthetic DMARD)
合成DMARDのことで、これはさらに二種類に分けられ
① csDMARD (conventional synthetic DMARD)
これまで使用されてきたMTX(リウマトレックス)、サラゾスルファピリジンなど従来型の合成DMARDsのことです。
② tsDMARD ( targeted synthetic DMARD)
分子標的型合成DMARDsで、今回の報告では特にトファシチニブ(ゼルヤンツ)を意識しています。
さらに、
③ bDMARD (biological DMARD)
生物学的DMARDで、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)など、先発品の生物学的製剤のことです。
④ bsDMARD (biosimilar DMARD)
生物学的製剤の後発品のことです。
昨日、都ホテルにて開会されました。
今回は私が世話役で、特別講演として北海道内科リウマチ科病院の谷村一秀先生と成田明宏先生をお招きし、「関節リウマチに診療に用いる関節エコー検査」の演題名で御講演とエコーのデモンストレーションを行っていただきました。現在のリウマチ診療における関節エコーの位置を再認識でき、特にオリジナルのBox法による関節の血流を定量的にみる方法は興味深く拝聴しました。当日のデモンストレーションで使われていた機器と同じものが当院に入荷予定です。体への侵襲性がない検査なので、当院の診断、治療レベルの向上のため、積極的に活用させていただきます。谷村先生、成田先生夜遅くまで熱心に御講演いただき、本当に有り難う御座いました。ここでもう一度御礼申し上げます。
この会では、一般演題の方で、当院作業療法士の長田も発表しました。生物学的製剤にばかりスポットライトが当たる現在のリウマチ医療で、敢えて関節保護の重要性を問いました。落ち着いて発表できていたようで、ホッとしました。今後とも、なかなか診察室のみでは拾えない患者様の声に耳を澄まし、個々の患者様にあったアドバイスを心がけてゆきます。
本日は学会報告をさせていただきます。
第24回中部リウマチ学会が8月31日と9月1日の二日間名古屋にて開催され、参加して参りました。リウマチ医療に関連する様々のトピックについて発表が行われ、活発に討議が行われました。会長講演では名古屋大学の石黒先生が、名古屋のグルメ情報も満載のユーモア溢れる内容で、リウマチ治療の展望を述べられました。
個人的な印象では、学会を通してもっとも注目を受けたのは、数々の新しい生物学製剤とその比較試験もさることながら、新しい抗リウマチ剤として期待されるトファシチニブ(JAK阻害剤)についての報告であったかと思います。
これまでのところ、効果や副作用の程度は既存の生物学的製剤とほぼ同等と考えられていますが内服剤であることころが特徴です。これも夢の薬ではなく、感染症、高脂血症、白血球減少などの副作用が出ることが有り、発癌性などについてもデータを集積する必要性があるとして、米国での認可が数ヶ月延期されています。
興味深かったのは、当初はJAK3という部位を選択的に阻害することで効果と安全性を高められると考えられましたが、最近ではJAK1の阻害が良いとも考えられる、という竹内先生の講演でした。実は、7月、8月に当院で行ったリウマチスクールにて、6月に行われたヨーロッパリウマチ学会の報告として、トファシチニブ以外の最新のJAK阻害剤の成績も話しましたが、参加していただいた方は覚えておられますか?ACR20(治験で良く使用されます)という指標で見た有効性では、JAK1阻害剤のGLPG0634という薬剤が92%と1番良い数字が出ていましたね。
ところで、今回は時間も厳しい中、学会を最初より最後まで通して出席しました。学術的な報告の内容の他に、プログラムや全体の運営をいかに行っているのか見てきました。というのも来年第25回の中部リウマチ学会は城北病院の村山先生が会長として金沢で主催することとなりました。私も現在は上荒屋クリニックの所長という立場ですが、主催者側の一員として、身の引き締まる思いです。多くの関係される方々の御支援のもと、中部地方のリウマチ医療の水準の高さを示せる学会になればと念じております。
次回の学会開催予定の垂れ幕の下で城北病院の村山先生が挨拶しています。
まだ1年後ですが、すでにポスターは出来ています。夜のひがし茶屋街に加賀友禅です。
白山や金沢駅のスナップショットも捨てがたいですが、少し遊び心が出ていて良くないですか?
バイオ製剤全盛期のRA治療にあって、テーマは敢えて地域完結型医療、ユニバーサルデザインにスポットを当てています。誰もが自分の住む地域にて、最高水準の治療が差別無く受けることができるようにとの願いが込められています。 (*^_^*)